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「家を売っても住み続けられる」の罠|リースバックで相場の6割で買い取られ、数年後に追い出される人の話

「家を売っても住み続けられる」の罠|リースバックで相場の6割で買い取られ、数年後に追い出される人の話 節約・お金
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「ご自宅を売却しても、そのまま住み続けられます」——テレビCMや営業の電話で、こんな言葉を聞いたことはないでしょうか。「リースバック」と呼ばれる仕組みです。老後資金に不安のある持ち家の高齢者を中心に勧誘が増えていて、聞こえはとても魅力的です。

でも結論から言うと、これは「相場より安く家を買い取られ、相場より高い家賃を払い、数年後に追い出されるリスクまで負う」という、構造的に売主が圧倒的に不利になりやすい取引です。トラブルが多発し、国民生活センターと国土交通省がそろって注意喚起を出しています。今回は、その仕組みと数字のからくり、そして勧誘されたときの守り方をまとめます。あなた自身だけでなく、持ち家に住む親世代を守るための知識です。

■ 先に結論

  • リースバックの買取価格は、市場価格の6〜8割程度。最初から大きく損をする
  • 家賃は「賃貸相場」ではなく「買取価格」から逆算されるため、割高になりがち
  • 契約の約半数は「定期借家」。期間が来たら追い出されても文句が言えない
  • 高齢者を狙った強引な勧誘・嘘の説明によるトラブルが多発中。国が注意喚起している
  • 勧誘されても即決しない。契約書の「普通借家か定期借家か」を必ず確認する

■ リースバックとは——「売っても住み続けられる」の仕組み

リースバックは、自宅を不動産業者に売却してまとまったお金を受け取り、その後は業者と賃貸契約を結んで、家賃を払いながら同じ家に住み続ける仕組みです。「まとまった資金が手に入る」「引っ越し不要」「ご近所に売却を知られない」という売り文句で勧誘されます。

仕組み自体は合法で、使いどころが全くないわけではありません。問題は、その「条件」です。順番に数字を見ていきましょう。

■ 罠①:買取価格は相場の6〜8割

まず入口で損をします。リースバックの買取価格は、業者側の転売リスクや利回りが織り込まれるため、一般の市場価格の6〜8割程度になるのが通例です。3,000万円で売れる家なら、1,800万〜2,400万円ほどでしか買い取ってもらえない計算です。

極端な実例もあります。国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」には、業者から提示された700万円で自宅を売却した後、一般市場での取引価格は1億円以上だったと判明したトラブル事例が掲載されています。市場価格を知らないまま、言い値で売ってしまうとこうなります。

■ 罠②:家賃は「買取価格」から逆算される

「安く買い取られても、住み続けられるならいいか」と思った方、ここからが本番です。リースバックの家賃は、周辺の賃貸相場ではなく、買取価格を基準に決められるのが一般的です。目安は「買取価格の年6〜10%」。たとえば買取価格1,000万円・年10%なら、家賃は月8万円超になります。

業者から見れば「安く買った家から、毎月しっかり家賃を回収する」わけで、地域の賃貸相場より割高になるケースが多く報告されています。安く売ったうえに、高く借りる。この時点でかなり分が悪い取引です。

■ 罠③:約半数が「定期借家」——数年後に追い出される

そして最大の罠がこれです。国土交通省の実態調査によると、リースバックの賃貸契約のうち定期借家契約が全体の50%近くを占めています。

当ブログの立ち退き記事で書いた通り、普通借家契約なら入居者は法律で強力に守られ、家主都合の退去には立退料が事実上必須です。ところが定期借家契約は、期間が満了すれば契約はそこで終了。業者が再契約に応じなければ、立退料もなく退去するしかありません。「住み続けられます」と言われて家を売ったのに、数年後に合法的に追い出される——これがリースバックのトラブルで一番恐ろしいパターンです。

→ 関連記事:「建て替えるから出てって」は断れる|立退料の本当の相場と、1円ももらえない人の条件

■ 罠④:「買い戻せます」も、高くつく

「将来買い戻せるから安心」という売り文句もありますが、買い戻し価格は売却時に受け取った金額より数百万円単位で高く設定されるのが一般的です。実例では、相場の7割程度の2,100万円で売却し、買い戻し額はその2割増しの2,520万円というケースも。安く売って、高く借りて、買い戻すときはもっと高い。三重に不利な構造です。

■ 実際に起きているトラブル——国が注意喚起中

2025年5月、国民生活センターは「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」という注意喚起を出しました。紹介されている実例は、こんな内容です。

自宅マンションを約1,600万円で売却。「そのまま住み続けられる。家賃は約6万円」と言われて契約したが、3年後に家賃が突然約11万円に。業者からは「3年経過後に家賃が上がることは契約時に説明している。払えないなら早急に退去を」と迫られた——。

被害が多いのは、判断能力が低下した高齢者です。長時間の強引な勧誘、嘘の説明、内容を理解しないままの契約。「持ち家があり、現金に不安がある高齢者」は、業者から見れば格好のターゲットになっています。

■ 勧誘されたら・契約してしまったら——守り方5か条

  1. その場で絶対に決めない。「家族に相談します」で一度持ち帰る。急かす業者ほど危険です
  2. 先に自宅の市場価格を知る。複数の不動産会社に普通の売却査定を出してもらえば、提示された買取価格がどれだけ安いか一目で分かります
  3. 契約書の「普通借家か定期借家か」を必ず確認する。ここが運命の分かれ道です。口頭の「ずっと住めますよ」は信用しない
  4. 「一生住める」と言われて定期借家を結ばされた場合、消費者契約法(不実告知など)に基づいて契約を取り消せる可能性があります。諦める前に専門家へ
  5. 困ったら消費者ホットライン「188(いやや)」へ。最寄りの消費生活センターにつながります。契約前の相談もできます

■ それでも使っていいケースはあるのか

ゼロではありません。たとえば「新居が完成するまでの1〜2年だけ今の家に住みたい」など、期間を区切った使い方なら合理的な場面もあります。ただしその場合でも、複数社を比較し、条件(買取価格・家賃・契約の種類・買い戻し条件)を書面で確認するのが大前提です。「老後資金のために自宅をお金に変えたい」だけなら、普通に売却して住み替えるほうが手元に残るお金は多くなるのが通常です。

■ まとめ

  • リースバックは「安く売り、高く借り、追い出されるリスクを負う」構造的に不利な取引
  • 買取は相場の6〜8割、家賃は買取価格から逆算で割高、契約の約半数は定期借家
  • 家賃の急騰や退去要求などのトラブルが多発し、国民生活センターと国土交通省が注意喚起中
  • 勧誘されたら即決せず、市場価格を調べ、契約の種類を確認し、迷ったら188へ
  • 狙われやすいのは持ち家の高齢者。この知識は、ぜひ親世代にも共有を

太陽光の点検商法でも書きましたが、「向こうからやってくる、うますぎる話」は、まず疑うのがお金を守る鉄則です。家は人生で一番大きな資産。それを差し出す契約を、営業トークだけで決めてはいけません。

※本記事は2026年6月時点の公開情報をまとめた一般的な解説であり、法的助言ではありません。個別の契約の可否や取消しの可能性については、弁護士や消費生活センター(188)、自治体の無料法律相談にご相談ください。

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