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金融庁が「商品性の再考を」と名指しした”お任せ運用”——ファンドラップの二重手数料

節約・お金
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①「資産運用、まるごとプロにお任せください」

シリーズ第9回は、ファンドラップです。

第4回で、アクティブファンド——プロが銘柄を選ぶ投資信託——の8割が市場平均に勝てない、という話を書きました。今回はその一段上、「何を買うか」だけでなく「資産配分から売買まで、まるごとプロにお任せ」するサービスです。

証券会社や銀行の窓口で、退職金を受け取った世代を中心に勧められます。「お客様に合った配分で、私たちが運用します。値動きを気にして売買する必要もありません」。投資信託を自分で選ぶのが不安な人にとって、この「丸ごとお任せ」は、たしかに魅力的に聞こえます。

ですが、あなたが薄々感じている通り、この"お任せ"には、それなりの料金がかかります。しかもその料金、一段ではありません。中身を開けます。

②手数料を開ける——二階建てになっている

ファンドラップの手数料が「数%」と言われるのは、手数料が二階建てになっているからです。

  • 1階:投資一任報酬(+ラップ口座管理費)。「あなたの代わりに、配分を考えて運用します」というお任せサービスそのものの料金。これが年1%前後
  • 2階:投資信託の信託報酬。ファンドラップが「あなたのお金で実際に買っている投資信託」にかかるコスト。これがさらに上乗せ

あなたが払うのは、この1階+2階の合計です。合わせて年1〜2%、商品によってはそれ以上になります。

ここで第4回を思い出してください。アクティブファンド単体の信託報酬が平均1.6%で、それでも市場平均に勝てない、という話でした。ファンドラップは、その投資信託の上に、さらに「お任せ料」を乗せた構造です。第4回で見たアクティブファンドに、もう一階分の手数料を積んだもの——それがファンドラップのコスト構造だと考えると、分かりやすいと思います。

そして第2回・第3回で見たのと同じ「溶けるコスト」が、ここでも働きます。年1〜2%は、毎日少しずつ資産から差し引かれるので、痛みを感じにくい。けれど長く持つほど複利でじわじわ効いてきます(その複利の計算は第4回でやりました)。

③その手数料を引いた後、いくら残ったのか

では、二階建ての手数料を払って、リターンはどうだったのか。ここも公開データがあります。

金融庁の資料によれば、ファンドラップ専用ファンド全体平均の5年リターンは、年率2.3%(手数料控除前の運用成績ベース)。ここから二階建ての手数料・年1〜2%を引くと、あなたの手元に残るのは年0〜1%台という計算になります。

さらに、相場が崩れた局面ではもっと厳しくなります。市場が低迷した2023年度には、ファンドラップ利用者の半数近くが損失を抱えたと報じられています。一般に、利益が出た年でも実質の利回りは年1〜3%程度にとどまり、高いリターンは期待しにくいとされます。

整理すると——運用成績そのものが控えめなのに、そこから二階建ての手数料を引く。残るものは、わずか。あなたが払った「お任せ料」は、出た利益の相当部分を持っていきます。プロに任せた安心の対価として、これが見合うのかどうか。判断材料は、次の④です。

④金融庁が「商品性の再考が求められる」と名指しした

このシリーズで何度も登場している、金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート」。第3回で仕組債が「買う意義はほとんどない」と書かれた、あのレポートです。

そのレポートは、ファンドラップについてもはっきり指摘しています——

「高コストで安全資産の組み入れ比率の高いファンドラップについては、真に顧客利益に資するものか、商品性についての再考が求められる」

この一文、二つのことを言っています。ひとつは「高コスト」。二階建ての手数料のことです。もうひとつは「安全資産の組み入れ比率が高い」——つまり、中身の多くが債券などの値動きの小さい資産だということ。

ここが核心です。値動きの小さい安全資産を多めに持つ運用に、年1〜2%もの運用料を払う意味があるのか。安全資産中心なら、そもそも大きく増えることは期待できない。なのにお任せ料は一人前にかかる。「それ、真に顧客の利益になっていますか?」——監督官庁が、公式レポートでそう問うた商品です。

⑤「お任せ」の正体——払っているのは"考えなくていい"の代金

ファンドラップの価値は、運用の腕ではありません(③で見た通り、成績は控えめです)。本当の商品価値は、「自分で考えなくていい」「ほったらかしにできる」という、心理的な安心です。

それ自体に価値がないとは言いません。考える時間も気力もない人にとって、丸投げできることはサービスです。問題は、その安心の値札が年1〜2%=二階建てで、しかも③で見たように、その値札に見合うリターンが出ているとは言いがたいことです。「考えなくていい」という安心に、出た利益の大半を渡している——それがこの商品の正体です。

⑥じゃあどうするか——素直に、預貯金

毎回書いている通り、「丸ごとお任せしたい」という気持ちそのものは、否定しません。投資の勉強に時間を割けない人は大勢いますし、それは怠慢ではありません。

ただ、ファンドラップを勧められるのは、その多くが退職金を受け取った世代です。ここで、第5回(毎月分配型)と同じ話をもう一度します。退職金というまとまったお金を受け取ったその足で、窓口で勧められて投資を始めるのではなく、素直に預貯金でいいと思います。

だから、答えは第5回と同じ、拍子抜けするほど素直なものになります。増やす知識も準備もまだないなら、退職金は預貯金で守る。増えませんが、減るのは使った分だけ。二階建ての手数料も、下落の恐怖もありません。「お任せして増やしてもらう」より、「自分で守り切る」ほうが、この年代にはずっと確実です。退職金を守り切るのは敗北ではなく、立派な防御です。

すでに契約している人は、焦って解約する前に一度だけ確認を。運用報告書で「投資一任報酬+信託報酬の合計(年率)」と、「その手数料を引いた後の、自分の口座の実際のリターン」を見比べてください。数字を見た上で続けるなら、それは判断です。数字を見ずに「プロに任せているから安心」で続けているなら、それは判断ではなく放置です。

まとめ:お任せ料は、二階に分かれて取られている

  • ファンドラップの手数料は二階建て——1階「投資一任報酬+管理費」+2階「投資信託の信託報酬」。合計年1〜2%。第4回のアクティブファンドに、さらにお任せ料を乗せた構造
  • 金融庁データで5年リターンは年率2.3%。二階建ての手数料を引くと手元に残るのはわずか。2023年度は利用者の半数近くが損失
  • 金融庁が公式レポートで「商品性の再考が求められる」と名指し。「安全資産中心の運用に、高い運用料を払う意味があるのか」という指摘
  • 商品の本体価値は運用の腕ではなく"考えなくていい"安心。だがその安心料として、出た利益の大半を渡している
  • 防御は第5回と同じ——勧められるのは退職金世代。増やす準備がないなら、退職金は素直に預貯金で守る。退職金を受け取ったその足で、窓口で勧められて投資を始めない。既契約者は「手数料合計」と「ネットの成績」を確認

このシリーズで、私はずっと「中身を開けて値札を見よう」と書いてきました。ファンドラップは、値札が二階に分かれて貼ってある商品です。1階の「お任せ料」だけ見て契約し、2階の「信託報酬」に気づかない——その構造こそが、年1〜2%を痛みなく払い続けさせる仕組みです。お任せする前に、二階まで上がって、両方の値札を見てください。

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