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新NISAから締め出された投資信託——毎月分配型が「顧客本位でない」と言われた理由

節約・お金
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①「毎月、年金の足しになりますよ」

シリーズ第5回は、毎月分配型の投資信託です。

この商品、かつて銀行や証券会社の窓口で売れに売れました。売り文句は「毎月、分配金が振り込まれます。年金の足しにどうぞ」。退職金を受け取った世代を中心に、月々の現金収入という分かりやすい安心感で、一時代を築いた商品です。

そして今、この商品は新NISAの対象から外されています。国が作った「長期の資産形成のための非課税制度」が、この商品を入口で締め出した。何があったのか——例によって、中身を開ければ全部わかります。

②分配金には2種類ある——そして片方は「あなたのお金」

毎月振り込まれる「分配金」の中身は、実は2種類に分かれています。

  • 普通分配金:運用で出た利益からの支払い。これは正真正銘の儲けで、約20%課税されます
  • 元本払戻金(特別分配金):利益が足りないときに、あなたが預けた元本を取り崩して支払われるお金。日本証券業協会の公式解説にも「投資した元本の一部払戻し」と明記されています

注目してほしいのは、特別分配金が非課税であることです。「非課税ならお得じゃないか」——逆です。課税されないのは、それが利益ではないから。自分の財布から自分の財布にお金を移しても税金がかからないのと同じ理屈で、非課税という扱いそのものが「これは儲けではありません」という制度からの回答なんです。

つまり、毎月の振込のうち特別分配金の部分は、運用の成果ではなく、自分が預けたお金が小分けで返ってきているだけ。これが俗に言う「タコ足分配」——タコが自分の足を食べる、の意味です。

③タコ足の算数——気づいたときには100万円が30万円

数字で見ましょう。年5%の分配金を出す毎月分配型があるとします。ところがその年の運用成績は1%しか出ていない。それでも分配金は予定通り5%分支払われます。差額の4%はどこから来るか——あなたの元本からです

これを毎年続けると、元本は静かに削れていきます。受け取った分配金を「儲け」だと思って使っていた人が、いざ資金が必要になって解約したら100万円が30万円になっていた——そういう事例が現実に起こり得る構造です。

ここで「それ、ポンジ・スキームと同じでは?」と思った方。半分正解です。違いははっきりあって、ポンジ・スキームは「他人のお金」を配当と偽って配る違法な詐欺、毎月分配型は「あなた自身のお金」を返している合法な商品で、内訳も開示されています。ただし——「毎月お金が振り込まれているから、うまくいっている」という錯覚を燃料にする点だけは、構造的に共通しています。ポンジが崩壊の日まで気づかれないのと同じ理屈で、タコ足は解約の日まで気づかれない。毎月の振込という「順調さの演出」が、元本の目減りから目を逸らさせるわけです。

もうひとつ、静かに効いてくるのが複利の喪失です。利益を再投資して雪だるまを育てるのが長期投資の原動力なのに、毎月分配型は出た利益を(足りなければ元本まで)毎月吐き出します。雪だるまの芯を毎月削って配る運用に、複利が働く余地はほとんどありません。

④「自分のお金の返却サービス」に、年2%払う

ではこの商品の手数料はいくらか。毎月分配型の多くはアクティブ型の中でも重いコスト帯で、購入時手数料3%前後+信託報酬が年1.5〜2%級という組み合わせが珍しくありません。

ある試算では、購入時3%+信託報酬年2%の投資信託を10年持つと、手数料だけで資産の約23%が確定的に消えるとされています。

第4回で見たアクティブファンドの構造そのままですが、毎月分配型はさらにタチが悪い。なぜなら払っている手数料の対価が、かなりの部分「自分のお金を毎月返してもらうこと」だからです。自分の100万円を、月数千円ずつ返してもらう。その返却サービスの利用料として、年2%を払い続ける——冷静に文字にすると、ちょっと信じがたい取引です。

⑤国が動いた——「顧客本位でない」から新NISA除外まで

この商品の問題は、私が今さら指摘したことではありません。国がフルコースで動いた実績があります。

  • 金融庁が、分配金の仕組みへの誤解や手数料の高さを「顧客本位の業務運営」の観点から問題視。背景には、高額な分配金を出す毎月分配型が高齢者に大量販売されて社会問題化した経緯があります
  • 指摘を受けて多くの金融機関が販売を自粛。毎月分配型は2017年から5年連続で、買われる額より解約される額が上回る純減
  • そしてとどめが2024年——新NISAの対象から毎月分配型は除外されました。「長期・積立・分散」のための非課税制度に、この商品は適さない。制度設計そのものによる、国の意思表示です

ただし、第3回の仕組預金と同じ注意をここでも。この商品は絶滅していません。窓口では今も普通に買えますし、「隔月分配型」——毎月がダメなら1ヶ月おきに、という設計——はNISAの対象になり得ます。さらにシニア向けの新制度(いわゆるプラチナNISA)では毎月分配型を解禁する方向の議論まで出ています。形を変えて、売り場に残り続けている商品です。

⑥じゃあどうするか——素直に、預貯金

ここははっきり書いておきます。「毎月決まった現金が欲しい」というニーズ自体は、何も間違っていません。問題は、その願いにつけ込む形でこの商品が売られてきたことです。

毎月分配型が売れた理由を想像してみます。退職金を受け取った。預金のままでは増えなくて不安。でも投資は怖い。そこへ窓口で「毎月分配金が出ます、年金の足しにどうぞ」と言われたら——増えるなら、まあいいか。この「まあいいか」の正体は、リスクを取らずに増える商品があってほしい、という願望です。そして残念ながら、そんな商品はこの世に存在しません。存在しない商品への願望には、値段がつきます——実際には投資のリスクを取らされ、手数料を抜かれ、毎月振り込まれていたのは自分のお金でした。

だから答えは、拍子抜けするほど素直です。増やす知識も準備もまだないなら、預貯金のまま、必要な分だけ取り崩す。増えません。でも減るのは使った分だけで、手数料はゼロ、タコ足もありません。退職金を守り切るのは敗北ではなく、れっきとした防御です。少なくとも、年2%払って自分のお金を小分けで返してもらう取引よりは、確実に賢い。

誤解のないように補足すると、第4回で「買うならアクティブよりインデックス」と書いたのは、投資をするなら、という条件付きの比較です。投資そのものは、学んでから・長期で・なくなっても生活が壊れない範囲でやるものであって、退職金を受け取ったその足で、窓口で勧められて始めるものではありません。白状すると、私自身もまだ投資を始めていません。学んでいる段階で、その間のお金は預貯金で守っています。それでいいと思っています——「分からないものを買わない」は、このシリーズの第一原則ですから。

ちなみに、この商品の見分け方はシリーズで一番簡単です。ファンド名に、そのまま「毎月分配型」「毎月決算型」と書いてあります。仕組預金のように愛称で正体を隠してすらいない。名前を読む、それだけで足ります(ただし⑤で書いた通り「隔月分配型」「予想分配金提示型」といった親戚もいるので、「分配」の文字を見たら内訳を確認する癖を)。

すでに保有している人は、解約を急ぐ前に1つだけ確認を。直近1年の分配金のうち、普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の比率を、取引報告書や運用報告書で見てください。大半が普通分配金なら、その期間は実力で分配できていたということ。大半が特別分配金なら——毎月受け取っていたのは、ほぼ自分のお金です。数字を見てから、持つか売るかを決めても遅くありません。

まとめ:毎月の振込は、成果の証明ではない

  • 分配金は普通分配金(利益)と元本払戻金(自分のお金)の2種類。後者が非課税なのは「利益ではない」から
  • 運用1%・分配5%なら、差額4%は元本の取り崩し。複利の芯を毎月削って配るので、長期の資産形成と根本的に相性が悪い
  • 手数料は購入時3%+信託報酬2%級が珍しくなく、10年で約23%が消える試算も。対価のかなりの部分は「自分のお金の返却サービス」
  • 金融庁が「顧客本位でない」と問題視し、販売自粛・5年連続純減を経て、新NISAから除外。ただし隔月型などの形で今も売り場に生きている
  • 増やす知識も準備もまだないなら、素直に預貯金で取り崩す。リスクなしで増える商品は、この世に存在しない。既保有者はまず分配金の内訳を確認

毎月お金が振り込まれてくると、人は「うまくいっている」と感じます。その感覚と、実際に増えているかどうかは、別の話です。振込は成果の証明ではない。証明は、内訳にしか書いてありません

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