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先物・FX・暗号資産は、資産形成には向かない——「増やす」ではなく「賭ける」3つの正体

節約・お金
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①「FXで月◯万」「億り人」——景気のいい言葉を、開けてみる

シリーズ第14回は、3つまとめて開けます。先物取引・FX・暗号資産。SNSやYouTubeを開けば、「FXで月収◯万」「暗号資産で億り人」「スマホひとつで不労所得」——景気のいい言葉が、毎日のように流れてきます。

気持ちは、わかります。コツコツ働いて貯めた何万円かが、一晚の値動きで動く。そう聞けば、誰だって夢を見たくなる。

でも、ここで立ち止まってほしいのです。この3つは、「資産を増やす」商品ではなく、「値動きを当てる」ゲームです。そして結論から言えば——資産形成の手段としては、無理に選ばなくていい。 順番に中身を開けていきます。

②開ける(その1)——先物とFXは、誰かが勝てば誰かが負ける”ゼロサム”

まず、先物取引とFX。この2つは仕組みが近いので、まとめて見ます。

どちらも証拠金取引です。手元の何倍ものお金を動かせる(FXは国内の個人で最大25倍、先物も高いレバレッジ)。少ない元手で大きく賭けられる——これが最大の売りであり、最大の罠です。

そして、ここが本質。先物もFXも、基本はゼロサムゲームです。為替や指数が上がると思って買う人がいれば、下がると思って売る人がいる。一方の利益は、もう一方の損失。誰かの財布から誰かの財布へ、お金が移るだけ。新しい価値はどこからも生まれていません。しかも、その移動のたびに手数料やスプレッド(売買の価格差)が抜かれる。つまり参加者全体で見れば、ゼロサムどころか、コストの分だけマイナスサムです。

さらにレバレッジが効いているので、読みが外れると、預けた証拠金以上に損をすることがある(いわゆる追証)。相場が急変すれば強制ロスカットで一発退場。コツコツ積み上げた何ヶ月分かが、数時間で消える。「短期で大きく増やせる」は、裏返せば「短期で大きく失える」。同じコインの裏表です。

③開ける(その2)——暗号資産は、それ自体が何も生まない

次に暗号資産。これは先物・FXとは少し毛色が違いますが、行き着く先は同じです。

考えてほしいのは、「この資産は、持っているだけで何かを生むのか?」。株式なら、その会社が利益を出し、配当を払う。債券なら利息がつく。不動産なら家賃が入る。価値を生み出す”中身”があるから、長期で持つ意味があります。

では暗号資産は何を生むか。配当も、利息も、家賃も、生みません。 価格が上がる理由はただひとつ、「自分より高く買ってくれる次の人がいる」こと。それだけ。中身から生まれる価値ではなく、期待と人気だけで値段がつく。だから値動きが株の比でないほど激しく、半分になることも珍しくない。

誤解のないように言うと、ブロックチェーンという技術そのものには、私も将来性を感じています。ですが、「技術に期待する」ことと、「暗号資産を資産形成の柱にする」ことは、まったく別の話です。有望な技術と、その値段が今フェアかどうかは、関係がありません。中身を開けたら、そこにあったのは”値札”だけで、価値を生む仕組みではなかった——暗号資産を投資の中心に据えるとは、そういうことです。

④公的な裏付け——国は、この3つを「資産形成枠」に入れていない

ここでも、第13回で見た新NISAのつみたて投資枠が効いてきます。

つみたて投資枠で買えるのは、金融庁が「長期・積立・分散に適している」と認めた、低コストの投資信託だけ。先物もFXも暗号資産も、ここには一切入っていません。 そもそも暗号資産は、有価証券ですらない。国が「長期の資産形成にふさわしい器」を選ぶとき、この3つは外す側に置かれている——これが、いちばんわかりやすい公的なサインです。

税金の面でも、暗号資産は長く不利でした。利益はいまのところ雑所得・総合課税で、所得が大きいと住民税まで含めて最大およそ55%。株や投信の約20%に比べて重い扱いです。

ただし、ここは正直に書いておきます。2026年度の税制改正大綱で、暗号資産の利益を株式と同じ申告分離課税(約20%)へ移す方針が示されました。関連法の改正が前提で、適用は2028年ごろの見込み、当面(少なくとも2027年分の申告まで)は現行のまま、という段階です。つまり、税の不利は今後やわらぐ方向。——でも、だからこそ言いたい。仮に税率が下がっても、”値動きを当てるゲーム”という本質は1ミリも変わりません。「税金が安くなるから」は、資産形成の柱に据える理由にはならないのです。

⑤このシリーズ全体の、最初のふるい

ここで、第3回からの1分ルール——「仕組みを1分で説明できない商品は買わない」——を当ててみます。

「なぜ、この通貨は上がるのか」「なぜ、このコインは下がらないのか」。1分で、根拠を持って説明できるでしょうか。 たぶん、できません。「上がると思うから」は、説明ではなく願望です。プロでも当てられない短期の値動きに、レバレッジをかけて賭ける——それが、この3つの正体です。

そして、第13回とつなげてみてください。「短期で大きく」「スマホひとつで」「今だけ」——こうした、考えさせず、煎る言葉で勧められるものほど、危ない。このシリーズで開けてきた商品の共通項そのものです。熱心に「短期で大きく」と誘われたら、それ自体が最初のふるいになります。

⑥じゃあどうするか——「娯楽」と「資産形成」を、混ぜない

はっきりさせておきたいことがあります。私は、「先物もFXも暗号資産も、絶対にやるな」とは言いません。 失っても生活に響かない余剰資金で、趣味・娯楽として少額やるなら、それは個人の自由です。競馬やパチンコと同じ、“達びの予算”の中で楽しむぶんには止めません。

問題は、それを「資産形成」と混ぜてしまうこと。老後資金や生活防衛のお金を、値動きを当てるゲームに突っ込むのは、土俵を間違えています。娯楽は娯楽の財布で、資産形成は資産形成の財布で。 ここを分けるだけで、致命傷は避けられます。

では資産形成は何でやるか。答えは地味です。価値を生み出す資産(低コストの株式インデックスファンドなど)を、長く持つ。 向こうから電話もSNS広告も来ない、退屈な王道。けれど、退屈さこそが安全の証だというのが、このシリーズでずっと書いてきたことです(第4回)。

なお、投資にはリスクがあり、何を選ぶかは最終的にあなた自身の判断です。私は特定の商品を勧めているのではなく、「賭け」と「形成」を分けてほしい——それだけをお願いしています。

まとめ:その3つは、増やす道具ではなく、賭ける道具

  • 先物・FXは、基本ゼロサム。誰かの利益は誰かの損失で、新しい価値は生まれない。手数料の分だけ、全体ではマイナスサム
  • レバレッジは、増やす力であり、退場させる力。読みが外れれば証拠金以上の損失も。「短期で大きく増やせる」=「短期で大きく失える」
  • 暗号資産は、それ自体が配当も利息も家賃も生まない。値段の源泉は「次に高く買う人」だけ。技術への期待と、投資の柱にすることは別問題
  • 国は、この3つを新NISAのつみたて枠に入れていない。長期の資産形成にふさわしい器から外している側。税の不利は今後やわらぐ見込みだが、本質は変わらない
  • 防御は、「娯楽」と「資産形成」を混ぜないこと。賭けたいなら達びの予算で。資産形成は、価値を生む資産を静かに長く持つ

このシリーズで、私はずっと「中身を開けて値札を見よう」と書いてきました。今回3つの箱を開けて出てきたのは、価値を生む仕組みではなく、お金がただ移動するだけのゲーム盤でした。賭けたいなら、それは娯楽費でどうぞ。あなたの資産形成は、もっと退屈で、もっと確かな場所で、静かに育てればいい。「増やす」と「賭ける」を取り違えないこと。 それだけで、この3つの罠は、まとめて避けられます。

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