先日、あるオンラインサービスの月額会員をiPhoneから更新したときのことです。「あれ、聞いていた料金より1,000円高い…?」と思いながら、そのまま決済ボタンを押してしまいました。
あとで調べて分かったのですが、これは通称「Apple税」と呼ばれる仕組みでした。同じサービスでも、iPhoneのアプリ内から課金すると、Webから申し込むより3〜4割高い料金を払わされることがあるのです。しかも、これに気づかないまま何年も払い続けている人が大勢います。今回は「お金を守る」視点で、このからくりと回避法を解説します。
■ 先に結論
- iPhoneのアプリ内課金には、Appleの手数料(最大30%)が上乗せされていることが多い
- 同じサブスクでも、SafariなどのWebブラウザから申し込めば通常価格で使える
- サブスクやアプリ課金が多い人は、知らないうちに年間数万円を余計に払っている可能性がある
- 今すぐ、iPhoneの「設定」から自分のサブスク一覧を棚卸ししてほしい
■ 「Apple税」とは何か
Apple税とは、正式な税金ではなく、iPhoneアプリ内で課金や決済をする際に、App Storeの決済システムを通じてAppleがアプリ提供者から徴収する最大30%の手数料のことです(小規模事業者や1年以上継続しているサブスクには15%への軽減措置もあります)。
問題は、多くのサービスがこの手数料を「あらかじめ料金に上乗せ」して提供していることです。つまり、手数料を実質的に負担しているのは、アプリから課金しているユーザー自身なのです。
■ 実例:同じYouTube Premiumなのに月400円違う
代表例がYouTube Premiumです。Webブラウザから申し込めば月1,280円なのに、iPhoneのYouTubeアプリ内から課金すると月1,680円。まったく同じサービスなのに毎月400円、年間で4,800円も高くなります(料金は2026年時点)。
もちろん、Webから申し込んでも、iPhoneのYouTubeアプリで何の制限もなく使えます。違うのは「どこで決済したか」だけです。同じ構図は、オンラインサロンの月額会員、マッチングアプリ、漫画アプリのコイン購入、ゲームのアイテム課金など、あらゆるアプリ内課金に存在します。
■ スパチャ(投げ銭)はもっとえぐい
推し活をしている人は特に注意してください。iPhoneのYouTubeアプリからスパチャを投げると、Apple税が上乗せされます。Androidやパソコンなら5,000円で投げられるスパチャが、iPhoneアプリ経由だと6,500円になる、というイメージです。
さらに配信者側から見ると、アプリ経由のスパチャはYouTubeの手数料(約30%)に加えてアプリストアの手数料も差し引かれるため、最終的に配信者へ届くのは購入額の半分程度になるケースもあります。「推しにお金を届けたい」なら、パソコンやスマホのブラウザから投げるほうが、同じ出費でも多くの金額が届きます。
■ なぜ誰も気づかないのか
これだけ差があるのに気づきにくいのには理由があります。Appleの規定により、アプリ内で「Webから申し込んだほうが安い」と案内することが、長らく許可されていなかったからです。サービス側は安い窓口を持っていても、アプリの中ではそれを言えない。ユーザーは目の前に表示された価格で払うしかない。知らない人は一生気づかない設計だったわけです。
■ 年間いくら損しているのか?ざっくり試算
iPhoneのアプリ内課金を使っている場合の「余計な支払い」を試算してみます。
- YouTube Premium:年 +4,800円
- 月2,000円台のサブスク1本(オンラインサロン等):年 +10,000円前後
- 漫画・ゲームに月5,000円課金:30%上乗せで年 +18,000円相当
- スパチャを月1万円:年 +36,000円相当
サブスク2〜3本にアプリ課金の習慣がある人なら年2〜3万円、課金やスパチャが多い人なら年5万円超を、同じサービスのために余計に払っている計算になります。配達で1日働いた手取りが、決済ボタンの押し場所の違いだけで消えていく金額です。
■ 回避策:今日からできる3ステップ
① 自分のiOS課金を棚卸しする
iPhoneの「設定」→ 一番上の自分の名前 →「サブスクリプション」を開くと、Apple経由で課金中のサービスが一覧で出てきます。まずはここで「何にいくら払っているか」を確認してください。
パソコンからなら、ブラウザで https://apps.apple.com/account/subscriptions にアクセスしてApple Account(Apple ID)でサインインすれば、同じ一覧を確認できます。有効なサブスクと停止済みのものがまとめて表示されるので、棚卸しにはこちらが便利です。
② 新しく申し込むときは、アプリではなくブラウザから
サブスクに入るときは、アプリ内の課金ボタンではなく、ブラウザでそのサービスの公式サイトを開いて申し込みます。ポイントは「アプリの中で払わない」こと。これだけでApple税を回避できます。
一番確実なのはパソコンから申し込む方法です。PCにはiOSアプリがないため、間違ってアプリ内課金に誘導される心配がそもそもありません。
パソコンがない場合は、iPhoneのSafariやChromeからでも申し込めます。ただし、リンクが自動でYouTubeなどのアプリに飛ばされることがあるので、その場合はリンクを長押しして「新しいタブで開く」を選ぶなど、ブラウザのまま進むよう注意してください。スパチャもブラウザ経由なら表示金額のまま送れます。
③ すでにiOS課金中のものは「解約 → Webで入り直す」
いま①の一覧にあるiOS課金中のサブスクは、「解約 → 期限切れを待つ → Webから入り直す」の3ステップで切り替えます。
- ①のサブスクリプション管理画面から、対象のサブスクを解約する。解約は次回更新日の24時間前までに済ませること(24時間を切ると、もう1回分自動更新されてしまう場合があります)
- 解約しても即終了ではなく、支払い済みの期限まではそのまま使えます。慌てなくて大丈夫です
- 期限が切れたら、ブラウザでそのサービスの公式サイトを開き、同じアカウントのままWeb決済で登録し直す
サービス自体は継続したまま、支払い経路だけを安いほうに切り替えるイメージです(細かい手順や日割りの扱いはサービスごとに異なるため、各公式の案内を確認してください)。
■ 2026年、この状況は変わりつつある
実はこの問題、国も動いています。2025年12月18日に「スマホ新法(スマホソフトウェア競争促進法)」が全面施行され、App StoreやGoogle Playでアプリ外の決済への誘導が可能になりました。開発者はApple以外の決済手段を使えるようになり、手数料を下げられる道が開かれています。
今後は「アプリ内からWeb決済へ案内する」サービスが増え、価格差は縮んでいく可能性があります。ただし対応するかどうかは事業者次第で、現時点では「アプリ課金=割高」のサービスがまだ大半です。少なくとも当面は、自衛するのが確実です。
■ まとめ
- iPhoneのアプリ内課金は、Appleの手数料(最大30%)が上乗せされて割高なことが多い
- YouTube Premiumなら年4,800円、課金が多い人は年5万円超の差になることも
- スパチャはアプリ経由だと、推しに届く金額が半分程度になるケースもある
- 対策は「設定でサブスクを棚卸し」「申し込みはブラウザから」「既存分は解約→Webで入り直し」の3つ
- スマホ新法で状況は変わりつつあるが、当面は自衛が確実
太陽光や光回線の記事でも書きましたが、お金を守るコツは「目の前に出された価格や提案を、一度疑ってみる」ことです。同じサービスに余計なお金を払う理由はどこにもありません。この記事を読み終わったら、まずiPhoneの「設定」からサブスク一覧を開いてみてください。
※本記事は2026年時点の情報に基づきます。各サービスの料金・手数料率・規約は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

