最近、「定期借地権付きマンション」という言葉を、ニュースで見かけることが増えました。
都心のマンションが高くなりすぎて、普通のマンションには手が届かない。そこに、同じような立地で、少し安く買えるマンションが出てきた。そう聞くと、魅力的に見えるかもしれません。
でも、私の結論は「一般の人は、手を出すのは控えたほうがいい」です。安く見える理由を一つずつほどいていくと、その安さには、ちゃんと理由があるからです。
先に書いておきます。私は不動産の専門家ではありません。この記事は、公開されている情報をもとに、「買う前に知っておきたいこと」をまとめたものです。実際に検討するときは、必ず専門家に相談してください。
そもそも「定期借地権付きマンション」とは
ふつうのマンションは、建物の部屋と一緒に、土地の権利(の持ち分)も買います。
定期借地権付きマンションは、土地を買いません。土地は地主から借りていて、買うのは建物の部屋だけです。そして、その借りる期間には、あらかじめ期限が決まっています。
期限は、50年や70年といった長さが一般的です。期限が来たら、建物を取り壊して、更地にして地主に返す。契約の延長はできません。これが、ふつうのマンションとのいちばん大きな違いです。
なぜ今、話題になっているのか
不動産調査会社の東京カンテイによると、2026年に完成する予定の定期借地権付きマンションは全国で4,808戸。前の年の約6倍で、過去最多になる見通しです。
背景にあるのは、マンション価格の高騰と、都心の土地不足です。土地を売らずに貸したい地主と、少しでも安く買いたい人。その両方の事情がかみ合って、供給が一気に増えています。
落とし穴①:毎月の支払いが、ふつうのマンションより多い
定期借地権付きマンションでは、管理費と修繕積立金に加えて、次の2つを毎月払います。
- 地代:土地を借りている代わりに、地主に払うお金
- 解体準備金:期限が来たときに建物を壊すための積み立て
この2つを合わせると、月に1万〜2万円前後になることが多いとされています。物件によっては、さらに高いこともあります。
たとえば月2万円だとすると、1年で24万円。50年なら、それだけで1,200万円です。土地の固定資産税がかからない分はありますが、トータルの毎月の負担は、ふつうのマンションより重くなることがほとんどです。
しかも地代は、ずっと同じとは限りません。周辺の地価や税金に合わせて、見直されることがあります。
落とし穴②:最後は、価値がゼロになる
ふつうのマンションは、建物が古くなっても、土地の権利が残ります。
定期借地権付きマンションは、期限が来たら、建物を壊して土地を返します。手元には何も残りません。つまり、時間がたつほど、残りの期間が短くなるほど、価値は確実に減っていき、最後はゼロになります。
「安く買える」のは、この「最後はゼロになる」分が、最初から値段に織り込まれているからです。割安なのではなく、価値が下がっていくものを、それに見合った値段で買っている。そう考えたほうが正確です。
落とし穴③:売りたいときに、売りにくい
人生は、何十年も同じ場所に住むとは限りません。転勤、家族の変化、介護。途中で売りたくなることもあります。
でも、定期借地権付きマンションは、年数がたつほど売りにくくなります。残りの期間が短い物件ほど、買った人が住める期間も短くなるからです。
さらに、買い手が住宅ローンを使えるかどうかも、売れやすさを左右します。
落とし穴④:住宅ローンが組みにくい
定期借地権付きマンションは、住宅ローンを扱う金融機関がそもそも少なめです。残りの期間が短いと、長いローンは断られることもあります。
また、多くの金融機関は、ローンを組むときに地主の承諾を求めます。地主が承諾しなければ、現金で買うか、承諾がいらない金融機関を探すしかありません。
これは自分が買うときだけでなく、将来売るとき、買い手の側にも同じことが起きます。
落とし穴⑤:期限が来たときの「出口」が重い
いちばん見落とされやすいのが、期限が来たときの話です。
50年後、70年後。そのとき自分は何歳で、どこに住み、どれくらいの貯金があるのか。期限が来れば、住み慣れた家を出て、次の住まいを用意する必要があります。
建物を壊すには、住んでいる人たちの間での話し合いも必要です。積み立ててきた解体準備金で、本当に費用が足りるのか。住んでいる人の多くが高齢になった中で、話がまとまるのか。こうした問題は、まだ全国で前例がほとんどありません。
それでも、向いている人はいる
ここまで落とし穴を並べましたが、定期借地権付きマンションが誰にとってもダメ、というわけではありません。
- 都心の好立地に、自分の世代だけ住めればいいと割り切れる人
- 子どもに家を残すつもりがない人
- 地代や解体準備金を払い続けても、家計に十分な余裕がある人
- 期限が来たときの次の住まいまで、計画を立てられる人
こういう人にとっては、「所有権のマンションより安く、いい場所に住める」という選択肢になります。実際、立地のいい物件は、定期借地権付きでも人気があるようです。
私が「控えたほうがいい」と思う理由
それでも私が、一般の人には控えたほうがいいと思うのは、「割安」という言葉だけで判断してしまう人が多いと思うからです。
毎月の地代、最後にゼロになる価値、売りにくさ、ローンの組みにくさ、そして期限が来たときの出口。これを全部理解したうえで、それでも「この立地に住みたい」と言える人でなければ、あとで後悔する可能性が高いと思います。
私自身、借金を返し終えた経験から、「身の丈に合わないものを、背伸びして持たない」と決めています。家についても、私は今のところ賃貸が性に合っています。定期借地権付きマンションは、「高くて買えない都心の家を、少し安く買う」ための手段です。でもそれは、背伸びの形を変えただけ、ということにもなりかねません。
その考え方は、「借金を任意整理して3年で完済した全記録」にも書いています。
まとめ|「安い理由」を理解してから考える
- 定期借地権付きマンションは、土地を借りて建物だけを買う。期限が来たら、壊して土地を返す
- 2026年は供給が過去最多になる見通しで、注目が集まっている
- 地代と解体準備金で、毎月の負担はふつうのマンションより重い
- 時間がたつほど価値は減り、最後はゼロになる
- 売りにくく、住宅ローンも組みにくい
- 期限が来たときの住まいと、解体の話し合いという「出口」が重い
安いのには、理由があります。その理由をすべて理解して、それでも住みたいと思える人だけが選ぶもの。私はそう考えています。
※この記事は、公開されている情報をもとにした一般的な解説で、特定の物件の購入をすすめたり、否定したりするものではありません。地代や解体準備金、借地期間、ローンの条件は物件ごとに大きく異なります。実際に検討するときは、契約内容を確認したうえで、不動産会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してください。
参考にした情報
- 東京カンテイの調査(2026年竣工予定の定期借地権付きマンション戸数)
- 日本経済新聞「定期借地権付きマンション、地価高騰で急増」(2026年7月9日)
- 借地借家法(一般定期借地権:借地期間50年以上)

