「近くで工事をしていて、お宅の屋根が傷んでいるのが見えたので」「今なら無料で点検しますよ」——突然そう言って玄関に来る訪問営業。これは、点検商法と呼ばれる手口の典型的な入り口です。
結論から言います。こういう訪問営業は、その場で契約しない。そして、家や屋根に上げない。 この二つを守るだけで、ほとんどの被害は防げます。ここでは、玄関先で信用させる”名乗り”のトリックと、点検商法の流れ、そして断り方を、公的機関のデータをもとに整理します。
先に結論
- 「無料で点検します」「このエリアの担当です」と玄関に来る訪問営業は、その場で契約しない・家や屋根に上げないが鉄則
- 信用させる名乗りはトリック。「消防署の方から来ました」の”方”は方角の意味で、公的機関の職員とは限らない。大手企業や役所をかたるのも定番
- 流れは、無料点検 → 「屋根が傷んでいる」「危ない」と不安をあおる → 上げて作業 → 高額な工事契約。「遠くから見たら傷んでいた」は典型の入り口
- 屋根工事の点検商法の相談は2018年度から2022年度で約3倍に増え、契約者の8割超が60歳以上。高齢の家族がいる人は特に注意
- 一番効く防御は「上げないこと」。屋根や室内に入れた時点で、主導権が相手に移る
- ドアは開けずインターホンで応じる・その場でサインしない・はっきり断る。契約してしまっても書面受領から8日はクーリング・オフできる。困ったら188
玄関で信用させる”名乗り”のトリック
まず、相手がどう名乗るかに注意します。
訪問営業は、いきなり売り込むのではなく、まず信用させてからが本番です。よく使われるのが、公的機関や大手企業を思わせる名乗り方です。
たとえば「消防署の方から来ました」。これは一見、消防署の職員のように聞こえますが、「方」は方角の意味にも取れる言い回しで、「消防署から来た」とは一言も言っていないのがミソです。ほかにも、「大手通信会社の担当で、このエリアを回っています」「近所で工事をしているので、ご挨拶に」といった具合に、本当の所属をあいまいにしたまま、それらしさで距離を詰めてきます。
肩書きや会社名がどれだけ立派に聞こえても、玄関先でその真偽は確かめられません。名乗りだけで信用しないことです。知らない相手からの突然の話を疑う姿勢は、別記事でも扱っています。
点検商法の流れ
手口の流れは、だいたい決まっています。
まず、「無料で点検します」と言って近づく。きっかけは「近所で工事をしていて」「遠くから見たら屋根が傷んでそうだった」などです。点検したあとで、「屋根瓦がずれている」「このままだと瓦が飛んで近所に迷惑がかかる」と不安をあおり、その場で高額な工事の契約を迫ります。
国民生活センターによると、これが「屋根工事の点検商法」の典型です。最近は屋根だけでなく、給湯器、分電盤、太陽光発電なども狙われています。なかには「点検が義務化された」とうそを言って点検に入り込もうとするケースもあります。「義務化された」「無料」「今だけ」は、いったん疑ってください。
なぜ「上げない」が一番効くのか
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
訪問営業の被害は、相手を屋根や室内に上げてしまった時点で、ほぼ主導権を奪われます。点検と称して上がれば、こちらには見えないところで「ここが傷んでいる」と言われ、その場の不安と勢いで契約まで運ばれてしまう。なかには、わざと壊して見せるような悪質な例もあります。
だから、いろいろ言ってきても、上がらせない・上げない。点検が必要かどうかは、玄関先で話を打ち切ってから、自分で選んだ業者に確かめれば十分です。
どれくらい起きているのか
数字で見ておきます。
国民生活センターによると、屋根工事の点検商法に関する相談は、2018年度から2022年度にかけて約3倍に増加し、過去5年で最も多くなりました。そして、契約した人の8割超が60歳以上です。住宅リフォーム工事のトラブル相談は年間1万件を超え、その多くが訪問販売によるものとされています。
自宅を大切に思う気持ちや、「ご近所に迷惑をかけては」という責任感につけ込まれるのが特徴です。高齢の家族がいる場合は、こういう訪問があったらすぐ家族に相談する、と決めておくだけでも違います。
断り方と、契約してしまったときの出口
最後に、守り方です。
- ドアは開けない・インターホンで応じる・はっきり断る。 「結構です」で十分。理由を説明する必要はありません
- その場でサインしない。 どんなに急かされても、契約はいったん持ち帰る
- 上げない・上がらせない。 点検も作業もさせない
- 点検が必要なら、自分で選んだ業者に頼む。 向こうから来た相手に任せない
もし契約してしまっても、出口はあります。訪問販売による契約は、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができます。書面に不備があれば、その期間を過ぎても解約できる場合があります。困ったら、住宅リフォームの相談窓口や、消費者ホットライン「188(いやや)」に相談してください。電話から始まる点検の勧誘もあるので、こちらもあわせて読んでおくと安心です。
まとめ
- 「無料で点検します」と玄関に来る訪問営業は、その場で契約しない・家や屋根に上げないが鉄則
- 「消防署の方から来ました」など、公的機関や大手をかたる名乗りはトリック。名乗りだけで信用しない
- 流れは、無料点検 → 不安をあおる → 上げて作業 → 高額契約。屋根・給湯器・分電盤・太陽光が狙われている
- 屋根工事の点検商法の相談は2018年度から約3倍、契約者の8割超が60歳以上。高齢の家族は特に注意
- その場でサインしない・上げない・点検は自分で選んだ業者に。クーリング・オフは8日。困ったら188
玄関に来た「無料点検」は、上げない・サインしない。たったこれだけです。
この罠は、相手を家に上げないだけで避けられます。

